覚えてる? 約束のハーゲンダッツ!


 コロナは明けたってことになるのだろうか?
 27歳になる教え子たちが7人、てぃだにやってきた。ワッタンとリサはもちろん分かる。イワにアンちゃん!!男の子はすぐに分かった。あとはーーー。
 うーん・・・🤔 だれ???
 大人になった女の子は分からない。
 全員バドミントン部。まさこが顧問だった! はずなのに💦
 アンちゃんは「覚えててくれたんやね!うれしい!!」と。イワは「やまほどおる教え子の中で名前を覚えててもらえるなんてすごい!!」と。
 いやいや、あなたたち、あの頃のまんまだもん。全然変わってないやん😅

 早く早く!!思い出して!と、まさこに迫る女の子たち。「わたしは誰?」攻めがしばらく続き、やっと全員思い出しました。アカリ、ラン、スミカ。あなたたち、本当にきれいになったねーー。いい大人の顔してるわー。
 名前を思い出すと途端に「まさこー!ハーゲンダッツの約束覚えとる?」とタメ口バド部たち。かつての約束が鮮やかに蘇ってきました。
 そうなんです。彼女たちとの約束。忘れるはずがありません。いつも頭の片隅にある楽しくもちょっと切ない思い出。
 
 彼女らが2年生になる前の春のこと。後にバド部の部長になるユウがやってきて「まさこ!バド部の顧問になって!!」と訴えました。当時、還暦を目前に「年を取ったら部活の主顧問なんて無理!」と剣道部の副顧問で少し気の楽な立場だったまさこ。ユウからの突然の訴えには正直びっくり、ドッキリ、無理無理😥
 スポーツ少年団で鍛えられ、強者揃いだった先輩たち。かたや未経験者揃いの彼女たち。夏の大会までは先輩たちが主役。でもその試合を終えたら、今度は自分たち中心の時代になる。このままでは、先輩たちと同等の力は出せない。基礎を鍛えて強くなりたい。土日に練習がしたい!練習試合にも行ってみたい!それが、ユウの願いでした。
 うーん😥
 せっかくの気楽な立場から、主顧問にねー。だけど、まさこを選んで頼みに来てるのに逃げるわけにもいかないしーー。
 「わたしはバドミントンのことは、全く知らないし、指導はできないよ」とまさこ。
 「いいよ。まさこは、見てるだけで!」とユウ。
 この子たちのためにひと肌脱ぐかと、心を決めて管理職に「来年度からバド部の顧問をしましょうか?」と告げてしまいました。
 部活顧問の発表のときのユウのガッツポーズ。不安ながら、まさこと彼女たちの部活がスタートしました。
 体育館の壁に設置してある黒板に、彼女たちが貼り出したバド部のスローガンは、
 「まさこは見ている!」
 それを書いたのが当時の3年生だったというのも笑える話ですが。部活の時間になると体育館のステージに椅子を出して、練習を見ているだけ。それでも、彼女たちは、自分たちで熱心に練習していました。
 強くなるためには、今までは土曜日だけだったけど、日曜日も練習がしたい。練習試合にも行ってみたいという彼女たちの願いは、教員の長時間過密労働を問題にし、部活に週一の休みを!と訴える組合で活動してきたまさこにとっては、まさに逆行そのものでした。
 現場にいると、こういう矛盾に晒され、教師自身が試されるものです。まさこは、ユウの願いに負けました😅
 土日休まず練習し、他校に練習試合を申し込み、行ったり来たり。専門的な指導のできる先生のいる学校を含めた合同練習も計画。そこは、彼女たちにとって練習内容を考えさせられるいい機会にもなったようでした。なにしろ、まさこは見てるだけですから😅
 夏が来て、先輩が最後の試合を終え、最後の練習の日、まさこは、お疲れさまのアイスクリームを買って来ていました。美味しそうに食べて、先輩たちは引退。彼女たちの時代がやってきました。
 秋の新人戦に向かう頃、誰かが言い出したのが「まさこ!私たちが勝てたら、アイスを食べさせて!」
 「はいはい、勝ったらアイスね」「よーし、来年県大会に出られるようになったら、ハーゲンダッツを食べさせてあげる」
 「うわー!ハーゲンダッツ!」「高いよー、まさこ大丈夫?」
 ああ、なんという約束。

 翌年、3年生になる彼女たちをおいて転勤をしました。約束は果たさないままに。
 子どもたちとの約束を踏みにじる大人の都合。
 彼女たちからは試合のたびに報告が入りました。「ハーゲンダッツご馳走して」と。

 27歳になってもまだ覚えている14歳の頃の約束。名前を思い出せないほど年月を経ても、彼女たちと交わした約束は、忘れることはできない。

 いつの日か、ハーゲンダッツを持ってみんなと会いたい。そして、伝えたい。ごめんね!を。