とむらいの 夕月夜


 黄波戸に住む知り合いが亡くなられた。
 事務所で喪服に着替えて通夜に向かった。黄波戸の海は凪いで、月がくっきりと浮かんでいた。
 家族葬と聞いていたが、ご自宅には、ご近所の方が集まっておられた。線香の香る仏間で読経が始まる。まさこの実家も浄土真宗なので、通夜の作法は分かっている。どうやら熱心な信徒とみられるご近所のみなさんと、南無阿弥陀を一緒に唱えながら通夜式に参列した。
 浄土真宗のご院家さんは、読経のあとで、お話をされるが、これはまさに布教活動だなぁと感じる。決して嫌なものではない。
 人の死をどう受け止めるか。死とは誰にも平等に訪れるもので、決して穢れたものではなく、浄めの塩や友引など迷信に振り回されてはいけないと穏やかに語られる。この日、一堂に会した者たちでともに弔う故人の死を、「穢れ」と捉えられるのは、本人にとっても残されたものにとってもあまりに悲しい。
 温かく穏やかなご院家さんの、いわゆる説教にしばし聞き入っていた。それにしても、声のいいご院家さんだった。太くよく響く声のゆったりとした読経は、多分まさこの経験した通夜の中で最長だったと思うが、あまりにいい声なので、苦痛には感じなかった。
 通夜式を終えて、立ち去るとき、妻のキクコさんが見送りに玄関先まで出てこられ「今忙しいでしょう?身体を壊さないように気をつけてくださいね」と言葉をかけてくださった。
 「私のことを労ってくださるなんて、恐縮です。キクコさんこそ、お身体お大事にね」とお返しして、黄波戸をあとにした。
 民家もまばらな黄波戸の真っ暗な夜空に、月は、もっとくっきりと高く昇っていた。

 急なことだけど、帰り道が不安なので泊めてもらえない?とルドルフさんに声をかけたら「英会話レッスンがあるけど、好きにしてて」と快く泊めてくれるとの返事。
 ありがたきは、てぃだの仲間☺️
 10分ちょっとでそれこそ闇につつまれた里山の古民家、ルドルフ邸に到着。
 明かりの灯る玄関。ああ、ルドルフ邸は夜の佇まいも大したものだなぁ。
 彼女に言われていたとおり、勝手に玄関を開けて入るとリビングからルドルフさんの明るい声。英語で会話してる最中だった。こんばんは!と目配せして、そーっとゲストルームに向かう。
 いつもお世話になってるゲストルームには・・・な、な、なんと!!ここは、星のやか?(星のやに泊まったことがないから、本当は分からないけど🤭)と思う素晴らしいおもてなしが待っていた❣️
 取説付きの夕食がテーブルの上に用意されていたのに、びっくり😳
 一つひとつの付箋に書かれた文字を読みながら、これを書きながら夕食を用意してくれるルドルフさんという人を思い浮かべていた。
 段取り能力の高さ。相手への気配り。おもてなしの心が伝わってくる。
 ふふ。やっぱり先生だなぁ、ルドルフさん。
 では、遠慮なく!!
 そう!こういうおもてなしに遠慮は返って無作法だし、心遣いに対して失礼な話。
 すぐに喪服を脱いでパジャマに着替えたら、取説どおりにカセットコンロにガスボンベを装着し、鍋に具材を投入、火をつけた。鍋のころあいを待つ間に、自家製ドレッシング付きサラダ🥗を食べる。これも取説に書いてあるように、冷蔵庫から取り出した白ワインを飲みながら🤭 美味しい‼️
 そのうちに鍋も出来上がり、ガツガツ、グビグビ。
 泊めてほしいと電話したときの「夕食はいいからね」「じゃあ、簡単なものでも用意しとくね」のやりとりはどこの話???
 美味しいからついつい食がすすんで、ひとり鍋を楽しませてもらった。ほとんど食べ終わる頃、レッスンを終えたルドルフさんがゲストルームに現れて、一緒にグラスを傾けた。朝が早いことも伝えてあるので、ほどほどに!と、分かっていながら、ついつい飲んでおしゃべりして、気付けば2本目の白ワインが出ていた🫢
 かつて同じ職業の者同士の会話は、ある意味共通したものが、底を流れているのか?そうそう!!それそれ!!と相槌を打つことばかり。短い時間ではあったが濃密に語ってときを過ごした。
 おやすみー!のあとは、これまた爆睡。
 朝早くルドルフ邸をあとに仕事に向かった。
 突然の訃報。急な訪問。それでも快く迎えてくれる仲間のいる幸せ☺️


 ここは星のや? 取説付き夕餉❣️